ECO-TOPプログラム・インタビュー記事

インタビュー特集① ECO-TOP認定大学に聞く!「環境ジェネラリストに育つ人材を」
・インタビュー特集② 企業に聞く!「社会の為に、自分たちの為に、道を切り開く」

インタビュー特集:企業に聞く!「社会の為に、自分たちの為に、道を切り開く」
(パシフィック・コンサルタンツ株式会社)

 ECO-TOPプログラムを通じてインターンシップ学生を受け入れているパシフィックコンサルタンツ株式会社でお話を伺いました。


【 経営企画本部 後藤剛之部長 】

Q,企業としてインターンシップを受け入れていこうと思ったきっかけを教えてください。


 きっかけとしては、大学の繋がりが最初ですね。当社は技術の専門家集団なので、大学の研究室との繋がりが多く、そこから受け入れていくようになりました。それこそまだインターンシップという言葉がなかった時代からですね。
 実は、建設コンサルタント業界は、世間一般的に認知度が限りなくゼロに近いんです。社員の家族ですら何をしているのかわからないってこともありましたから。そんな認知度を変えていくという意味でも学生の受け入れは積極的に継続しています。


Q,インターンシップに来た学生にはどういったことを学んでもらいたいですか?

経営企画本部 後藤剛之部長
経営企画本部 後藤剛之部長


 まずは何より当社が何をしているかを知って頂きたいです。業務内容の大半が行政から受注する公共事業になるので、なかなか表にはでないものですから、影で社会を支えている企業があるということを是非インターンシップで知ってもらいたいですね。
 また、当社のインターンシップにお越しいただくに当たり、広く仕事を体験するのが基本スタンスなので、最短でも2週間という実習期間を設けています。期間中は、基本的な社内業務から始まり、現場の体験、できれば委員会等にも資料作成から参加まで体験してもらいたいと考えています。


Q,インターンシップには、やはり専門性の高い学生を求めているのでしょうか?


 いいえ、むしろ固定のイメージがない真っ新な状態でいろいろな学生さんに来ていただきたいですね。
 採用の話になってしまうのですが、これまで大学院生を採用することが多かったんです。これは従来、修士で研究してきた内容を入社後もそのまま会社で業務として続けていくスタイルが多かったからなんですが、社会情勢の変化からインフラに関連する課題も複雑化してきており、1つの専門性だけでは対応できなくなってきています。例えば、特殊な施設の設計を専門とする人が、その業務しかできませんとなると、日本でこれからその施設を一つも作らないとなった時、どうしようも無くなります。極端な例ではありますが。


しかし、現実に業務は多様化してきており、それに合わせて、当社では経済学や社会学など文系を学んできた方も採用しています
求めている人物像でいうと、柔軟でいろいろな課題に取り組める人材ということですかね。


Q,なるほど。複雑化してきている社会の課題に対する御社の取り組み、また御社の強みはどういったところになるのでしょうか?


 学生と絡んだ取り組みですと、多摩地域の地域振興を多摩大学さんと一緒に取り組んでいます。多摩地域を活性化していく取り組みとして机上の研究だけじゃなく、実際に社会で実践していくためにはどうすればいいのか。その中で学生さんにも参加してもらっています。


インタビュー中の後藤部長 こういった取り組みは、これまで行政が担うことが多かったんですが、行政だけでは解決できない部分を地域の方と一緒に解決していっています。


 ちょっと話が変わりますが、当社は1951年に設立しました。現在当社が行っているインフラ等に関する業務は、第二次世界大戦くらいまで、役所の技術者が行っていたんですが、戦後復興や経済成長に伴って民間のコンサルティングエンジニアが必要という動きに代わっていったんです。欧米では、コンサルティングエンジニアというのはごくごく一般的だったんですが、当時の日本には無かったんです。そして日本の建設コンサルタントの先駆けとして当社が誕生しました。そうした歴史もあり、常に道を切り開いていく。社会の為、自分たちの為に道を切り開く精神で取り組んできました。
 社員数が現在約1500名ですが、そのうち1090名の社員が技術士(国家資格)を有しています。私も技術士を取得しているんですが、技術士は技術士法の中で公共の福祉を優先しなければならないといったようなことが謳われていまして、そのため社員は、社会の為に自分たちの力を出そうという意識が高いですね。


 また、非常にリベラルな社内風土ですので、役員も社員から「○○さん」と呼ばれるような会社です(笑)
 当社が、経営の考え方として最重要に考えているのは人材です。人を大事にしようというのが経営の中で一番大切な位置づけとなっています。この業界は長時間労働が当たり前とも言われますが、我々はこの長時間労働とはしっかりと決別しようというのを旗印に掲げています。


Q,それでは最後に学生に対してアドバイスをお願いします。


 こうなりたい、こういうことをしたいという自分の想いはみなさんあると思います。では、その想いをどうやって実現していくか。というところをいろいろな人から情報を集め見て聞いて、知見を広めて考えてほしいと思います。
 建設コンサルタント業界では、様々な分野の業務を行っている当社のようなコンサルタントを総合コンサルタントと言うことが多いんですが、当社は統合ソリューションサービスと言っています。これは様々な知識が寄り集まって、統合して、社会の課題をソリューションするという経営理念で行っています。いろいろな知恵をいろいろな人が出し合う。そういう感覚を持っていただきたいですね。


あとは是非インターンシップを活用していただきたいと思います。就職活動をする上で企業研究は大切です。インターンシップを通じて少しでも会社の理解を深めるきっかけにしてください。



【 環境部 濱田敏宏部長 岡田泰明氏 】

Q,実際にインターンシップではどのような事をされるんですか?


濱田 2週間の場合ですと、最初はパソコンのセッティングや基礎的なデータの整理などを行ってもらいます。その後、ケースバイケースでタイミングが合えば、実際に現場に行ってもらったり、委員会にも同席してもらっています。

岡田 私が学生担当をすることが多いんですが、最初のデータ整理などでは、資料整理・取りまとめから入ってもらいます。その際、WordやExcelを使いますが、人に見せることを意識した資料の作成など、ちょっとしたテクニックも学んでもらいます。

浜田部長、岡田氏
写真左から 浜田部長、岡田氏


Q,現場はどのようなところに行かれるんですか?


岡田 現場は1日で行って帰って来れるところしか行けませんので、行けるところが限られてくるんですが、山であったり、市街地の中でも公園などに行くことがあります。ですが、2週間という短い期間ですので、天候やタイミングによっては残念ながら現場に連れていくことが出来ないときもあります。たとえ私が連れていけなくても、部署内で他メンバーと協力しながら、出来るだけ現場も経験してもらえるように調整しています。
あとは、規模の大きな案件だと学生さんが全体像を把握することが出来ないので、そういったところも意識しながら経験してもらう業務を考えています。短い期間でも、今、自分がやっている作業は何の為にやっているのか。それをしっかり説明するようにしています。

濱田 現場ではなく委員会に同席してもらうこともあります。委員会は技術専門家や大学の先生方が集まって行う検討会や行政の各担当課の課長・部長クラスが集まって行う議論もありますので、おそらく学生時代では経験できないことだと思います。もちろん守秘義務の部分が多いのでこの部分は自身の中に経験としてだけ留めておいてもらうことになりますが。


Q,これまで環境部ではECO-TOPプログラムを通じてどのくらいの学生を受け入れているんですか?


濱田 平成19年のスタートから年に1,2名ほど受け入れていますが、来ていない年もありましたので、これまでに5,6名でしょうか。子供のころから自然が大好きという学生の方が多いですね。それで実際に自然調査などを経験してみたいという方が多いと思います。

岡田 「環境の仕事をしている人たちはどういう方たちなんだろう」という興味の部分が強くて、まだ建設コンサルタントを目指していますという学生さんは来ていないと思いますね(笑)


<インターンシップ実習内容例>
自然環境調査および環境影響評価に関する実習(10日間)


・1日目
 オリエンテーション、インターンシップの概要説明

・2日目
 環境影響評価に関わる文献調査および整理(作業補助)

・3~4日目
 自然環境調査の準備

・5~6日目
 自然環境調査の実施(調査アシスタント)

・7日目
 若手社員技術発表会の聴講

・8~9日目
 自然環境調査結果の整理(作業補助)

・10日目
 実習報告資料の作成

実習風景の写真1
自然環境調査
実習風景の写真2
若手社員技術発表会


Q,実際にECO-TOPプログラムを通じ、学生を受け入れてよかった点、また課題点はありますか?


岡田 よかったと思うのは、こういう業界で、こういう仕事をしている人たちがいるということをしっかりと認識して帰ってくれるのが一番嬉しいですね。自然環境に対してビジネスを成り立たせて生活をしているというイメージが出来ない学生さんがどうしても多いみたいで、実習に参加して、実際にこのように事業が進んでいるんだと認識してもらえるのが、我々からするとありがたいところです。

濱田 私が思うところでは、やっぱりインターンシップに来る学生は現場に行って調査をやりたいと思っている方が多いと思います。ですが、全ての調査をその方が出来るわけではないので、調査で上がってきたデータをいかに活用するかというところに着目してもらいたいですね。先ほどお話した委員会などでは、調査データを基に、その地域にどういう自然環境を残していくべきかということも考えます。
 建設コンサルタントに対して、事前知識や先入観を持たれるよりも白紙の状態で会社を見ていただくのが良いと思っています。


Q,インターンシップに来た学生にはどうなってもらいたいですか?


岡田 2週間という短い期間ですから、その中で学んでもらいたいことは、指示されたことを全て自分でしようとするのではなく、自分で出来ることと出来ないことを理解することですね。ここまでは自分で出来る、ここはできないから聞くという見極めが出来るようになると次のステップに進めると思います。社会人になる上で大切な部分ですからね。そのさじ加減みたいなものを学んでもらえたらいいのかなと思います。

濱田 やはり建設コンサルタント会社とはどういう会社か、ということを知ってもらいたいです。我々、建設コンサルタントは、自然環境を大切にした上でいかに安全で安心な社会をつくるかということが求められています。そして環境部では、豊かな自然環境を次世代に引き継ぐために自然環境の調査・計画等を行っています。実習体験によって、自然保護に対する自分なりの考えをもつことのきっかけになればと思います。

インタビュー中の浜田部長、岡田氏 また、業界の認知度を上げると言いますか、建設コンサルタント自体の知名度を上げたいとも思っています。欧米では弁護士や医者と同格レベルにあるのがコンサルタントですが、日本ではまだなかなか。そういうことを来てもらった学生さんに知ってもらい、周りの方にも、建設コンサルタントはこういう仕事をやっているんだよと話してもらいたいですね。




Q,濱田様と岡田様は、御社にどうして入社されたのですか?


濱田 当時インターンシップという名前はまだなかったんですが、大学時代に企業研修として当社に来たことがきっかけです。言葉は悪いんですが、当時の社会は、「これをやっとけ」っていう命令が基本の時代だったんです。そんな中、当社は研修生の私にも、業務を行う上で、なぜこの作業をやっているのかを丁寧に教えてくれたんです。
 入社してからも、若い人の意見をどんどん取り入れてくれて何でも話せる会社でした。確実に取り入れてくれるとは言い切れませんが、話を聞いてもらえるという部分は大きかったですね。

岡田 若手がかなり自由に意見を言わせてもらって実際にやらせてもらえる。会社に貢献できるのであれば、何をやってもいいというのに近いところがありますね(笑)

濱田 若手が自由に意見を言うことができ、やる気があれば何でも挑戦できるというのは当社の社風ですから。


Q,最後に学生にアドバイスをお願いします。


濱田 環境だけに拘らず、あらゆることに積極的に取り組んでください。

岡田 自然環境というのは、物理・化学・数学みたいに答えがあるものじゃないんです。人がどう考えるか次第なところがあって、自分が意見の異なる人と人との間に立つことが大切になってきます。技術や知識が最も重要と考えられがちで、それは間違ってはいないですが、対生き物、対環境ではなく、実は対人=コミュニケーションの部分が重要になるということを心に留めておいてほしいと思います。



パシフィックコンサルタンツ株式会社


 「社会の変化の先には、いつもパシフィックコンサルタンツがいる」


 私たちパシフィックコンサルタンツは、創業以来60年以上もの間、建設コンサルタント企業のリーディングカンパニーとして、社会に貢献し続けて参りました。高度な専門技術・サービスをもとに安全・安心で魅力ある国土づくり、暮らしやすい豊かな地域づくりに向けて都市計画、防災、水環境、エネルギー、道路、鉄道、建築、情報システムなどの調査・計画・設計・マネジメントを行っています。